高校野球甲子園大会において、【魔曲】と呼ばれる応援曲(チャンステーマ)が有る事をご存知ですか?
智弁和歌山高校の応援に使われる曲なんですが、劣勢の試合終盤、「ジョックロック」という曲を応援で使うと何故か押せ押せムードになってビッグイニングになるため、【魔曲】と呼ばれる様になりました。
特に8回に「ジョックロック」の演奏が始まると、大差で負けているにもかかわらず同点に追いついたり、逆転することが多く、打線の爆発力がすごすぎるため、逆に点が入らない時には、SNS上で「ジョックロック不発」などと書かれるようになっています。
試合終盤での大量得点による逆転劇が起きやすいのですが、これには智弁応援団が「ジョックロック」を【魔曲】へと育てた緻密な戦略がありました。
今回は、ジョックロックとなにか?ジョックロックが生んだ大逆転劇を紹介していきたいと思います。
目次
【魔曲】ジョックロックとは?
ジョックロックという曲を応援に使い始めたのは智弁和歌山の吹奏楽部。
智弁和歌山の吹奏楽部といえば、今では甲子園応援の定番曲となった「アフリカンシンフォニー」など送り出している甲子園応援でもトップクラスの吹奏楽部。
吹奏楽部の顧問の先生が、智弁和歌山に就任した際に、野球部が甲子園に出場するたびに新作の応援曲を提供することを約束。地方大会から全校応援に駆け付ける大所帯での応援にマッチした「アフリカンシンフォニー」など十数曲を作曲・編曲。
ところが甲子園常連校であるがゆえに甲子園出場回数も半端なく曲の提供に四苦八苦するようになってしまった。
必死になって参考曲を探しているうちにたどり着いたのがYAMAHAのデモテープに収録されていたある曲で、原曲はゆったりテンポだった曲を押せ押せムードが出るようにアップテンポに編曲したのが、ジョックロックが生まれた秘話です。
2000年夏、新曲のジョックロックを引っ提げて甲子園に乗り込んだ智弁和歌山は、二度目の全国制覇を成し遂げ、ジョックロックは、その後大逆転を生む曲としてファンの間では【魔曲】と呼ばれるようになった。
その時の準決勝でも、大会NO1ピッチャーと言われた柳川高校の香月良太投手を相手に、4点差の劣勢からの8回裏2本のホームランで追いつき、11回裏のサヨナラタイムリーで勝利するのですが、この両シーンでもジョックロックが流れており魔曲ぶりを発揮していました。
直近では、2018年春の選抜、準決勝で優勝候補と言われていた神奈川の東海大相模に、5-10の劣勢から大逆転というドラマチックな試合を演じました。12-10で勝利するのですが、12点のうちジョックロックの演奏中の得点が10点という恐るべき魔曲ぶりを発揮。
最近では、他校でもチャンステーマとしてジョックロックを演奏するのですが、不思議なことに魔曲と呼べるほどの効果はありません。
同校の顧問の先生によると、魔曲の効果は※「不協和音」にあるのではないかとは分析していて、相手を不安な気持ちにさせる要因になっているという。
他校がジョックロックを真似ても効果が出ないのは、完全コピーをすることが難しくこの「不協和音」が抜けているせいらしい。
※「不協和音」=2つ以上の音が同時に出された時に全体が強調しないで不安定な感じを与える和音。
「ジョックロック」を【魔曲】へと育てた緻密な戦略とは?
新曲として使い始めた2000年に全国制覇という結果に繋がったために偶然【魔曲】と呼ばれるようになったジョックロック。
応援団は、その勝利に導くジョックロックのイメージを壊さないようにの使いどころに注意を払っていると言います。
一般的な高校野球の応援では、打者ごとに演奏曲を変えるのですが、それでは短すぎて盛り上げることはできないとして、智弁和歌山の応援は、1イニング中同じ曲を演奏し続けます。
ですがジョックロックだけは例外で、8回以降、ランナーが得点圏(2塁以上)に進んだ時に、応援団と吹奏楽部の連携で応援が開始されます。
応援団によると、ジョックロックがかかるからビッグイニングになるわけではなく、得点が入りそうな場面でジョックロックを演奏して「ジョックロックがかかると得点が入る」イメージを植え付けていき徐々に【魔曲】に育てていったといいます。
この曲が流れ始めると球場全体が異様な盛り上がりを見せ何かが起こりそうな雰囲気を作り出すのですが、相手チームにとってはものすごくプレッシャーになるでしょうね。
よく選手のインタビューで「応援の後押しが・・・」という言葉が出ますが、智弁和歌山にとって吹奏楽部は最高の応援団ですよね。
ジョックロック炸裂!これが魔曲の威力!
1:伝説の試合 智弁和歌山VS帝京
2006年夏の甲子園準々決勝
この試合は、両校合わせて29安打25得点という乱打戦で、甲子園史上「最も壮絶な試合」と呼ばれています。
2:6点差の逆転劇 智弁和歌山VS興南
2017年夏の甲子園 1回戦
序盤に6点リードされるも9対6の逆転勝利
おわりに
魔曲、ジョックロックの事を紹介してみましたが、甲子園の高校野球で、応援に目を向けるというまた違った楽しみ方が出来るのではないでしょうか。
今後も智弁和歌山の吹奏楽部に注目したいと思います。